WIN5完全解説講座・基礎編Part2

  • 2022-12-5

WIN5の傾向:「本命バイアス」は存在するのか?

WIN5投票の基本

WIN5は単勝を当てる馬券なので、基本は「どうやって単勝を当てるか?」ということになるが、その最も単純な方法は、「最も予測勝率が高い馬を選ぶ」すなわち「単勝1番人気馬を選ぶ」というもの。では、それをWIN5で実践するとどうなるのか?について以下で考察する。

単勝人気順での分類

以下のテーブルは、過去のWIN5において各レースの勝ち馬の単勝人気順の出現数で分類したもの。ここに表示されているのは、1番人気馬が5勝したパターン#1と4勝して残りの1勝を6番人気馬までの馬が挙げたパターン#2~#6の6パターン。(2022年11月13日現在)

単勝人気 総配当 的中数 目数 回収率(%)
1 2 3 4 5 6
1 5 0 0 0 0 0 10,260 1 1 16
2 4 1 0 0 0 0 215,750 8 5 68
3 4 0 1 0 0 0 217,630 6 5 68
4 4 0 0 1 0 0 433,110 3 5 136
5 4 0 0 0 1 0 700,230 4 5 220
6 4 0 0 0 0 1 0 0 5 0

パターン#1は、クエスチョン「WIN5で全て1番人気馬を選択したら回収率はどのくらいか?」への解答で、回収率はわずか16%だった。パターン#2と#3は平均的な回収率でパターン#4と#5ではかなりの利益が出ている。パターン#6は#5の反動で的中数なしとなっているが、パターン#4~#6を合算しても回収率118%で悪くない。(これが基礎編で紹介した「1×4 Method」)

では、何故このような結果になるのであろうか?以下で詳しく分析することにする。

1番人気馬が勝つ確率とは?

前項のテーブルのパターン#1は5レースすべてで1番人気馬が勝ったケースで過去1回しかない。このデータは第650回までのもので、中止と不成立が12回あったので638回の有効投票回数で的中1回ということになる。配当は10,260円なので回収率は約16%と全くの不振で大赤字。

では、この大赤字が偶然なのか?赤字になる理由があるのかを考える。まず、確率的に638回で的中1回は少ないのか妥当なのか?以下で2001年以降の約7万強のレースの単勝人気順の勝率を示す。 

1番人気馬の勝率は平均で32.6%。したがって、1番人気馬が5連勝する事象の確率は0.326の5乗で0.00368すなわち0.368%となる。

単純に言うと1000回の試行で平均すると4回弱の出現が期待できること。

WIN5に関しては、試行回数638回で1回の出現は確率的には少ないと感じるが、統計的には誤差の範囲といえる。ただし、仮に3回出現しても、それぞれが的中事例と同程度の配当だった場合の回収率は5割ほどで大赤字には変わりはない。

したがって、データからは「1番人気馬5連勝の事象は回収率が悪い」ように見える。ではなぜこれほど配当が低いのか?

本コラムの第1回「WIN5完全解説講座・基礎編」で単勝オッズとWIN5配当との相関が明らかになったが、それによると「WIN5理論値オッズは、各選択馬の単勝オッズの積の267倍である」であり、「WIN5統計値オッズは、各選択馬の単勝オッズの積の299倍である」ということ。

では、この1番人気馬5連勝の回の比率はというと・・・単勝オッズの積の147倍だった。これは、統計値の約半分だが、実は本コラム第1回でも紹介した「係数Pr/Xの値の分布図」をみると120倍から203倍の範囲の分布が最も多いことから特に珍しいことではない。問題は、配当が統計値より大幅に少ないことは偶然なのか?必然なのか?ということである。

WIN5オッズ係数(WIN5の的中オッズが対象の各レースの単勝オッズの積の何倍にあたるかを示す数字)の分布図

本命バイアス

人気上位馬への過剰投票を「本命バイアス」というが、それに関しては興味深い論文がある。

電通大から国税庁という珍しい経歴の久留米大学法学部関本大樹教授が書いた「WIN5の収益性に関する一考察 : 主として過去データに基づく期待回収率に関する傾向分析について」。これはいわゆる「馬券裁判」においての雑所得認定の是非について税法上の観点から考察したものだが、WIN5の回収率に関して統計的な分析が加えられている。その中で「本命バイアス」に関する記述があるので以下に引用する。

 WIN5に投票する者の心理として、結果について余りにも予測不能であるため、合理的な水準以上に本命指向の票を過剰に購入する傾向(本稿では当該傾向を「大穴バイアス」との関係から仮に「本命バイアス」とよぶこととする。)があることを強く示唆するものであるといえよう。

久留米大学法学 = Journal of law and politics

この説によれば、「WIN5では単勝オッズの低い馬への投票(ここでいう本命指向の票)が合理的水準(単勝売上比率に相当するという前提)より多くなる」とのことで、この傾向を「本命バイアス」とよんでいる。

この説の根拠は、「本命サイドで決まったWIN5の配当が単勝オッズから導かれる期待値(前項のWIN5理論値オッズ)より低いことが多い」ということだが、その是非について以下で詳しく検証する。

「残り票数」による推定

WIN5対象レースが確定するとその結果によってWIN5全投票総数のうち的中の可能性が残されている票数が発表される。これを「残り票数」とよび、前レースの残り票数(またはWIN5開始時票数)のうち当該レースで勝馬に投票した総数を表す。このデータを使えば、前レースの残り票数のうちその勝馬に投票された比率が求められる。

WIN5において、それぞれの5レースの勝馬選択は独立に行われると仮定すると、あるレースにおいて「残り票(それまでの的中票)」とそれ以外(既に外れた票)の単勝分布が異なる理由がないので、上記の比率はWIN5での当該レースにおける全投票における勝馬への投票の比率にほぼ等しいと考えることができる。

この前提において、レース毎に「残り票数」から求めた勝馬の単勝得票比率と単勝オッズから導かれるWIN5得票比率を比較のためにプロットしたグラフを以下に示す。

左図において赤線は単勝比率=WIN5比率を表し、その線より下にあれば単勝比率よりもWIN5比率が低いことを、上にあれば単勝比率よりもWIN5比率が高いことを表している。

このグラフから明らかなように、単勝比率が60%を超えるレンジではWIN5比率は単勝比率より相対的に高くなる傾向がある。これは事前にオッズが表示される単勝馬券においては1.3倍以下のオッズには費用対効果が強く意識されるのに対し、当てることがより重視されるWIN5においてはそういった心理的抑制が働きにくいことが原因と考えられる。したがって、このレンジでは関本教授の主張する「本命バイアス」は存在するといえる。

では、この「本命バイアス」がどのように作用しているか、次回では実際の例を元に検証することにする。

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